新世代の台頭!-第2回全日本ミドルオリエンテーリング大会

4日、前日の雨が上がった三重県伊賀市の『田代池』にて、第2回全日本ミドルオリエンテーリング大会が開催された。激戦の末、男子杉村俊輔(東北大OLC)、女子宮川早穂(東大OLK)と、いずれも次代を担うJWOC世代の若手が制した。

三重県西部の山林が舞台/苦しいコースセット?

昨年始まり、今年が第2回となる全日本ミドル。選ばれたテレイン、『田代池』は標高766mの霊山の南東麓に位置する。三重県西部を代表する『青山高原』や『奥鹿野』、『四季のさと』といったテレインと同じく布引山地の山系になり、それらより北部にあたる。また霊山の北麓には、以前にその名も『霊山』(後にリメイクされて『上柘植』)というマップが京大OLCにより作成されている。

『田代池』は昨年度三重県内で開催の第5回全日本スプリントの当初の候補地とされた(プログラムの駐車場案内図はJSSOMでの作図の名残か)。結局はスプリント選手権に見合うスピードを出すには山林部分が険しいと判断され、別のテレインが用意された経緯がある。細かく侵食が進んだ地形に概ね植生のよい林。他の三重県西部のテレインと似た特徴を持つ。沢は水はけが悪く、線状の湿地が多く見られるのが独特で、前日に雨というコンディションは参加者たちを苦しめた。

地図上には通行可能度低下のグリーンハッチも多く見られるが、コースは概ねそうした部分を避けて組まれた。重たい山林のオリエンテーリングから105番コントロールを挟んで一転、会場周辺はスプリントを思わせる軽快な林に切り換わる。この終盤部分は、多くのクラスで共通の回しとなった。またM21Eはスタートから第4コントロールまでM21Aと同じなど、限られたコントロール配置でのコースセットに苦心の跡がうかがえる。コントロールディスクリプションの配布がスタートの2分前である点が、違うクラス同士で事前に比較することをうまく防いでいる。

激戦の21E、若手が制す

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M21E優勝の杉村俊輔のルート。1つ1つ丁寧にプランしてこなしている

M21Eはスピードの上がらないコンディションに対し、いかにミスを出さずに辛抱するかが問われるレースとなった。飛びぬけた巡航速度を記録した選手もなく、上位は次の選手まで10秒から40秒以内の差で連なる展開となった。その中で東北大学3年、今年まで2年連続JWOC日本代表となった杉村俊輔が、初代覇者の小泉成行(O-Support)を33秒差で押さえて制した。レース前はさすがに優勝は考えていなかったが、力を出し切っての6位以内を目指してレースに臨む。第3コントロールで20秒のミスを犯したが、それが警告となり、その後は1つ1つ丁寧にこなしていくうちに首位でフィニッシュに至った。特に第11コントロールに向かう、小径が複雑に入り組んだエリアでは、スピードを落としてじっくり読図に時間を割くという落ち着きぶりを見せた。3位には柳下大(みちの会)が入った。

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W21E、M20Eそれぞれ優勝の宮川早穂、深田恒(→④⑤⑦⑧⑨)のルート。ルートチョイスに幅がなく、大部分のルートが一致している

W21Eのレース展開は、トップスタートの立教大学2年、宮川早穂と2番手スタートの渡辺円香(ES関東C)の一騎打ちの様相を呈した。宮川は第5コントロールで下流の東側に様子をうかがいに行って40秒のロスをした程度にミスを抑え、渡辺も極力ミスを抑えた展開で、終盤近くまで互いに積算1位を奪い合う。終盤、第8コントロールに向かう登りから宮川が抜け出し、フィニッシュまで軽快に走り抜けて最終的に渡辺に1分近い差をつけて勝利した。3位は大河内恵美(KOLC)。優勝した宮川早穂は弱冠大学2年生で今年の世界選手権代表にもなっている。男子杉村と共にトップエリートに交じって遜色のないスピードと技術を身に着けている。

激戦は20Eや他のクラスでも

M20EはW21Eと同じコースで行われた。トップスタートの濱宇津佑亮(トータス)はW21Eのラストスタートから17分後にスタートし、W21Eの最終選手に追いつく好走を見せ、3位に食い込んだ。優勝争いは結果的にW21E同様、上位の2人が激しく競る展開を見せた。序盤は深田恒(東大OLK)が首位に立つも、第4コントロールで西隣の沢に入る1分のミスで逆転、長谷川望(東海高校)に首位を譲り渡す。その後、深田が第8コントロールで3秒差にまで詰めた矢先、第9コントロールのミスで長谷川との差が40秒以上に開く。しかし、そこから長谷川がもたつき、最終コントロール到達時点では再逆転、最終的に深田が35秒差で制した。2位の長谷川、3位の濱宇津は共に高校2年生。このクラスは大学生優位の構図はもはやない。

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W20E優勝の五味あずさのルート。予定外の所に出ても、切り替えてその後に臨む

W20Eはラストスタートの砂田莉紗(KOLC)が第2コントロールまで首位に立ち、最終的に3位に入った。優勝した五味あずさ(金大OLC)は第1コントロールで最下位だったものの、第3コントロールでは既に首位に立ち、その後、2位となった中学生、宮本和奏(京葉OLC)と抜きつ抜かれつのレースを展開する。終盤は宮本がミスしたのに対し、五味は他クラスの選手との遭遇で流れに乗るうちに逆転、最終的に25秒差で栄冠に輝いた。ミスのあるレース内容ながらも、普段から月100kmにも及ぶトレーニングで培った走力で押し切ったという形だろう。

エリートクラスはすべて2分間隔スタートで行われたが、さすがにこの間隔であれば上位選手同士の並走は生じなかった。入賞者の中でもレースを通じて終始「一人旅」だった選手も少なくない。一方でAを初めとする他のクラスは1分間隔のスタートで、やはり秒差で優勝争いが展開される激戦となったクラスも見られた。また5歳刻みの年齢別クラスで、同じコースとなった組み合わせの中、年上のクラスのほうが優勝者のタイムで勝るという現象もいくつか見られた。

なお、今大会ではプログラムの記述にもあったとおり、スタート枠からスタートフラッグまでおよび最終コントロールからフィニッシュまでの誘導が赤の1色のテープで施された。「赤」の判別が難しい人は他の色と比べても多いようで、規則で2色のテープと定められていることにも合理性があるようだ。また110番コントロール東側約100m、建物が結ばれている黒線を壁のある構造物(通り抜け不可)と読み取れず、ロスタイムを計上した選手も少なからずいたようだ。

厳しいコンディションも満足の大会

前日の雨で輪をかけて滑りやすいコンディションだったが、厳しかったのは人に対してだけではなかった。113番コントロールの上、柵のある広場が第1駐車場だったが、脱出路の登り道がぬかるんでタイヤが空回りしたり、坂の途中から押してもらってようやく登れた車があったりと、車にとっても厳しい状態だった。

一方で当日の曇で推移する天候は参加者にとってはありがたかっただろう。会場には大会サービスで特産品の販売店がズラリと並び、中には伊賀忍者にちなんだ商品も見られた。入賞者に送られた特製メダルも特産の陶器の伊賀焼で、手裏剣の形に作られていた。三重県ではこの20年以内にロング・ミドル・スプリント・リレーの全日本大会4種目が唯一すべて開かれた。競技、参加者サービスの両面からのツボを押さえた運営が、すっかり身に染み付いているようだ。

速報より、

M21E – 3.4km ↑280m
1 杉村 俊輔 0:36:18 東北大OLC
2 小泉 成行 0:36:51 O-Support
3 柳下 大 0:37:01 みちの会
W21E – 3.1km ↑210m
1 宮川 早穂 0:39:09 東大OLK
2 渡辺 円香 0:40:04 ES関東C
3 大河内 恵美 0:42:47 KOLC
M20E – 3.1km ↑210m
1 深田 恒 0:30:11 東大OLK
2 長谷川 望 0:30:46 東海高校
3 濱宇津 佑亮 0:31:36 トータス
W20E – 2.4km ↑160m
1 五味 あずさ 0:35:08 金大OLC
2 宮本 和奏 0:35:33 京葉OLC
3 砂田 莉紗 0:37:15 KOLC