伝統ある大会で新たな運営の試み-第34回早大OC大会

9月1日、栃木県日光市において『毘沙門山』を舞台に「第34回早大OC大会」が開催され、最長クラスの6-①は真保陽一(B&B)、6-②は藤沼崇(新大OB越王会)が制した。

伝統ある早大OC大会も今年で34回目となるが、今年は過去33回の大会にはない試みがいくつかなされた。1つ目は、地図の作成、大会開催、地図管理をそれぞれ別の団体が担っている点。2つ目は、従来とは異なる区分でのクラス分けがなされている点。そして、3つ目は、大会後の復習制度を導入した点である。いずれも、詳細は後述する。

新たな運営方式で蘇る『毘沙門山』

本大会の地図作成は有限会社ヤマカワオーエンタープライズ(以下、YMOE)が担っており、今回の開催形式の呼びかけも、以下のような理念に基づいて、YMOEの山川克則代表取締役によってなされたものである。

現状、大会の立案から地元渉外、地図作成、大会に向けての組織化、これら全てを担うことは極めて高いハードルになりつつあり、よほどの活動力のあるところ(クラブ)だけが大会開催を続けている状態である。しかし、1.大会を開催すること 2.地図を作成すること 3.地図の版権を持ち地元渉外に責任を持つこと これらは別々の団体が行ってもよく、この方式を用いれば上記の大会開催のハードルを突破できるのではないかと考えている。
(第34回早大OC大会要項より要約)

今年度は、この早大OC大会だけでなく、11月に行われる「千葉大・東工大オリエンテーリング大会」もこの方式によって大会を開こうとしている。今後の大会開催のための第一歩として、本制度の効果を期待したい。

さて、本大会のテレイン『毘沙門山』は1984年度のインカレクラシックが開催されており、その後は練習会などで使用されることもあったが、ここ十数年程使われてこなかったテレインである。しかしながら、東武鬼怒川線からのアクセスも良く、今回YMOEの調査により高精度の地図として復活したことで、使いやすく面白い名テレインがまた一つ増えたと言えよう。日光のテレインは「(地図が)白い」「走りやすい」とよく言われるが、この『毘沙門山』はヤブが発達している個所も多く、競技者からは「思っていたより足場が悪い」「<日光>というテレインのイメージだけで挑むと見通しが悪くて苦しんだ」という声も聞かれた。一方で、他の日光テレインとも似た走りやすい林も存在しており、スピードの緩急がつくレースとなった。

また、コースについては、これまで地図作成に用いていた時間を試走やコース設定に回すことができたこともあってか、よく練られたものが作成された。競技者の反応はすべて網羅できたわけではないが、少なくとも高難易度の5、6コースについては好評だったように見受けられた。6-①の5→6では、上位者3人で完全にルートが分かれており、タイムを見る限りでは真保陽一の北回りの道辿りルートが一番速かったようである。試走の結果でも、結城克哉(鞍部同好会)の直登ルートよりは真保の北回りルートの方が速かったとのこと。深田恒(東大OLK)のコンタリングルートは、距離、登り共に抑えているが、終盤の等高線が詰まっている個所でスピードが出しにくく難易度が高くなっているのだろうか。なお、6-①、6-②コースについては、大会Webサイトにて上位3人のルート図が公開されているので、こちらもご覧いただきたい。

分かれたルート

クラス分け方式には課題も

本大会のクラス設定は、オリエンテーリング指導教本に記載されているレベルに基づいたクラス分けがなされた。指導教本を参照すると、レベル3-道から外れて森へ、レベル4-コンパスを使う、等高線の初歩、レベル5-ファインコンパス、等高線の理解、レベル6-小さな特徴物をつなぐ…といったようにレベルが設定されており、各レベルでの課題やテクニック、練習例などが記載されている。詳細は、指導教本を参照されたい。

このレベル3~6、加えて一部のクラスでは距離が短いsクラスが提供されたが、新しい方式と言うこともあって申し込みの際には混乱も見られたようだ。以下に、会場で聞かれた感想・意見を挙げてみる。30人程度にしか聞けていないので、実際はもっと色々な意見があるだろう。参考程度にご覧いただきたい。

好評

  • 今の自分にあった競技レベルのコースに挑戦できるという点で、従来の年齢分けよりも分かりやすい。
    (↑好評のほとんどはこの意見。特に、学生男子から多く見られた)
  • 女子のトップ層の人と普段競う機会が無く、今回こういうクラス分けがされたことで初めて同じコースを走ったが完敗してしまい、今後のトレーニングへのモチベーションが上がった。
  • 高齢クラスだと、距離が短いのはよいのだが、それに合わせてコースも簡単になっていることが多い。ひどいときだとBクラスと共通の時もある。距離は短くとも技術を要するクラスを走りたい…その点で、このクラス分けは良いと思う。
  • 各コースでsがあるのは「この難易度で走りたいけど長い距離はちょっと…」というニーズに対応できていてよいと思う。

不評・改善提案(要項での書き方について)

  • 要項にウイニングが書いていなかったので、申し込み時にどのクラスにすべきか悩んだ。ウイニング、もしくはだいたいの距離は明示してほしいと思った。
  • 女子や新人にどのコースを勧めるべきか迷った。
  • 従来のクラス分けとの対比があるとよかったと思う。例えば6=ME相当、とか。
  • 要項では、クラス分けの部分で「詳細はJOAの指導教本を参照ください」とあったが、多少要項が長くなっても各レベルの詳細はちゃんと書いておくべきだったと思う。わざわざ指導教本を確認しに行くのは不親切に感じた。

不評・改善提案(制度そのものについて)

  • いつも自分の年齢のクラスで出ているが、大会の楽しみの1つに「同年齢の人と競う」という点があり、今回はいつも競っている相手がどのクラスで出てくるかわからなかったので、申し込み時に困った。
    (↑高齢の方からの意見が多く、また、女性からも同様の意見が多かった)
  • 6コースはちょうどよい難易度だったが、エリート選手には物足りなかったのでは? 今回のテレインでは厳しいと思うが、6Lという逆に長いクラスがあってもよかったかも。
  • このレベル分けはコースを作る上での指標であって、それでクラスを分けてしまうのは何か違う気がする。クラス分けは従来の通りに行い、それにレベルを併記するのが一番良いやり方なのではないか? そうすれば、他の大会でもたまに問題となる「弱年齢クラスのコースが難しすぎる、高年齢クラスのコースが簡単すぎる」といった問題が防げるように思える。

不評が多くあるように見えるが、これは不評時の意見が様々あったためにそれを全て記載したためであり、実際の好評不評の比率はここからは読み取れないことを付け加えておく(好評意見も多かった)。なお、運営側でも考えがあったようであり、例えば従来のクラス分けとの併記を行わなかった理由としては「6=ME相当、と併記してしまうと、結局は従来のクラス分けと同じように人が分かれてしまうことを予想したため、あえて併記は行わなかった」とのこと。

このクラス分けは全国でも初の試みだったため、まだまだ改善の余地があると考えられる。しかし、今後の大会におけるクラス分けの考え方に一石を投じたという点で、本大会が果たした役割は大きいと思う。筆者自身、恥ずかしながら今回の早大OC大会のクラス分けを通じて初めて競技レベルの考え方やJOAの指導教本に触れた有様だったが、今後有効活用していきたいとも感じた。多くの人にとって、クラス分けや競技レベルについて考える契機となったのではないだろうか。

ゲリラ豪雨と落雷…家に帰るのも一苦労

本大会では、大会後にテレインに入って復習ができる制度を導入していた。スプリントの大会では最近見られるようになってきたが、山テレインでは珍しい制度である。競技の反省を現地ですぐに行えるという点で、オリエンテーリングの技術向上に役立つと思われるが、本大会では復習の時間帯から豪雨が降り注ぎ、残念ながら中止となってしまった。

この豪雨は落雷も伴っており、競技者の帰宅に大影響を与えることとなった。特に、東武線は落雷の影響で栃木駅から浅草方面のルートがふさがってしまい、新栃木駅は1時間以上にわたり強制途中下車となったオリエンティアであふれかえる事態となった。迂回路も電車が遅れていたり運休していたりと大変な有様であり、家に着くまで苦労した方も多かったことだろう。

来年度の早大OC大会情報!

実行委員会より来年度の早大OC大会についての情報を入手した。大会中に宣伝予定であったが、豪雨対応等で宣伝できなかったそうだ。情報によると、来年度は静岡県裾野市深良での開催を予定しており、時期は未定だが、次回は地図を自分たちで用意するよう準備を進めているとのこと。今回の運営経験をもとに、今後も伝統ある良質の大会が開かれ続けていくことに期待したい。

6-① – 5.0km ↑225m
1 真保 陽一 0:40:55 B&B
2 結城 克哉 0:42:49 鞍部同好会
3 深田 恒 0:43:57 東大OLK
4 糸賀 翔大 0:45:44 東大OLK
5 池 陽平 0:45:48 京葉OLクラブ
6 戸上 直哉 0:46:12 東工大OLT
6-② – 4.98km ↑220m
1 藤沼 崇 0:40:51 新大OB越王会
2 大西 康平 0:42:40 ぞんび~ず
3 宮西 優太郎 0:42:48 東北大学OLC
4 山上 大智 0:43:13 東京大学OB
5 田邉 拓也 0:44:18 養鶏OLC
6 紺野 俊介 0:44:45 横浜OLクラブ

One thought on “伝統ある大会で新たな運営の試み-第34回早大OC大会”

  1. ◆6-1クラスの5→6について
    競技責任者からコメントをいただけたので、紹介します。
    「試走時でのベストルートは真保結城深田のいずれのルートでもなく、脱出時からずっとコンタリングをして、土がけの下の切り開き道に乗ってアタックをするルートでした。真保ルートは途中まではスピードを出して走れるものの、最後の登りが辛い。深田ルートはあそこまで登るくらいなら結城ルートのほうがアタックも容易です」
    とのことです。

Comments are closed.