特別インタビューその1:ジュニアヘッドコーチ国沢氏に聞く(後編)

 今年、ジュニアのヘッドコーチに就任した国沢五月氏のインタビュー後編をお届けする。前編では就任の経緯、今年のメンバー選考の考え方などに触れた。今回はまずはチームの準備状況から聞いていく。

――今年、これまでのJWOC日本代表チームの準備状況はいかがですか?

国沢:選考会の後、これまでにAsOC参加を含む4回の合宿を行ってきました。2ヶ月間という短い期間でしたが、選手たちに大きな怪我もなく、良い準備ができていると思います。
中でもGWに開かれたAsOCは、国際大会の経験として、選手たちには貴重な場となりました。結果はM20Eでは中国の李翔選手に惜敗しましたが、彼は中国のシニアを含めた中でもトップ選手であり、そんな彼と競えたのは良い刺激となったと思っています。

――確かに、AsOCはJWOCチームにとって時期的にも内容的にも最適でしたね。

国沢:本当に良い経験になりました。機会をくださった運営の方々には感謝です。また5月下旬には、今回のデンマークテラインに似ている、秋田のワールドゲームス2001で使われた微地形に富んだ砂防林を、プロマッパーのロブ・プロウライト氏に再調査してもらい、メニューもプロデュースしてもらって練習を行いました。

――秋田というと選手たちの住居からは遠い印象を受けますが、効果のほどは?

国沢:遠くてもその価値はあったと思います。海岸沿いの微地形や2.5mの等高線に慣れる良い経験になりました。またこういうテラインでどんな戦術が有効か、どういう時にミスをするのかなど、良い予行練習ができたと思います。
もちろん国内でも屈指の難しいテラインなので、技術的にすべての選手が対応できたわけではありません。ただ本番と同質のテラインをクオリティの高い地図で練習できたのは本番への自信につながったと思います。

――遠さをものともせず、総力を結集してベストな練習環境を提供したということですね。ジュニア育成への並々ならぬ意気込みを感じさせられます。

国沢:また、今年からU-20強化選手というカテゴリーを設定し、合宿には代表選手以外にも同世代の男女5名が参加しました。彼らと代表選手の間には「代表に勝ってやる」「強化選手には負けたくない」という競争心が芽生え、それがお互い良い刺激になっていましたし、また今後のチーム作りにもつながる機会となったと思います。

※U-20強化指定選手(JWOC代表以外):橋本(東海高校)、佐藤、澤口、岡村(桐朋高校)、山岸(みちの会)

――新しい制度が早速、実を結んだ形ですね。

国沢:ただ、強化選手制度はこの合宿だけのためのものではありません。ジュニアが、選考会後のたった4回の合宿で技術が急激にうまくなったり、2ヶ月のトレーニングで体力がついたり、ということはありえません。今後、目指す結果を出していくには、年間を通した長期的な取り組みが不可欠だと考えています。強化選手はそのための制度なんです。

――ところで、今年の遠征スタッフは誰が行かれるんでしょうか?

国沢:今年も私が行ければ良いのですが、仕事や家庭もあり、2年連続2週間の休みは至難の業です。そのため今年は団長として同じジュニアコーチでトータスの石澤君が現地での面倒を見ることになっています。
でも1人では大変なので、もう1人をぎりぎりまで調整中です。2週間という遠征期間は長く、しかも夏休みには早いため、なかなか同行してくれる人が見つからないのが悩ましいですね。

――団長となって引率する石澤さんはJWOCへの同行は初めてなんですよね?

石澤:海外へは一度O-ringenへ参加しただけなので・・・団長といっても、選手達と同じ目線でデンマークの特殊なテレインと出会って、一緒に攻略法を考えていくことになると思います。
もしかしたら選手達の方が早く順応してくれるかもしれませんが、とにかく選手が現地で少しでも成長して、いい状態でレースに迎えられるようにということをしていきたいですね。

国沢:石澤君は確かに海外経験はあまりないですが、早稲田大でのコーチの経験や、紺野選手や寺垣内選手を育ててきた実績もあります。期待しています。

――しかし、かつてはJWOC同行のオフィシャル希望者が多くいて、行きたくても行けない人もいたと聞きます。大学院生を含め、学生のうちにそうした経験を積むのも良いことですし、来年以降はまた増えてほしいですね。

国沢:今年は時間がなくてできなかったのですが、この夏以降、ジュニアのコーチング体制も、もっと人材を募ってよりチームとして機能するようにしていきたいと考えています。遠征のオフィシャルも含め、我こそはという方は手を挙げてほしいですね。

――さてズバリ、今年のチームの目標は?

国沢:そうですね・・・・難しいんですが、チームとして具体的な結果目標をあげるとすれば、ミドル全員がBファイナル進出、リレーは、まずはウム回避と、昨年より1位でも上の順位を目指す(去年は男女ともブービー)といったところです。

――まずは任期初年としては現実的なところということでしょうか。

国沢:最初にお話しした通り、まず目指しているステップは「舞台に立つこと」です。ただ正直、今のジュニアは技術的にもフィジカル的にも、そのレベルにまで達しているとは言いがたいです。だから結果目標というよりは、これまで各選手がやってきたことをきちんと出し、実力通りのレースをすることが、まず目指している目標なんです。

――なるほど

国沢:こうした目標が、選手にとって、また応援してくれる人たちにとって、正直、ワクワクする目標かといわれると、そうとはいえない、というのはわかっています。
でも、夢のようなことを言って、応援していただく人に間違った期待を持ってもらいたくないし、それでバッシングを受けるようなことは避けたいというのもあります。

――理解できます。

国沢:ただ、何人かは未来へとつながる輝きを感じさせる結果を残してくれるのではないか、という予感もあるんですよ。もし彼らが本当の実力を出しきれれば、あわよくば・・・という期待があります。そういうレースを合宿中でも何回か見ることができましたし。
いろいろな意味で不安定なジュニアにとって、過剰な期待はプレッシャーになるんですが、希望はある、と思っています。

――1つでもそのような好結果が残せれば、皆にとって具体的な目標として明確に意識できるようになるのでしょうね。では、国沢さんの注目の選手は?

国沢:注目選手は・・・みんなです(笑)。

――(笑)。選手たちの特徴など、教えてください。

国沢:まずは男子から。最年長の石黒(岩手大3)は、技術にはまだ不安がありますが、登りでもスピードが落ちない驚異的なフィジカルが持ち味です。本番では、大きなミスをどれだけしないかが鍵になると思います。

三谷(東大2)は、スピードもあり、技術もまだはじめて2年目とは思えないクレバーなOLをする将来楽しみな選手です。後半になると落ちるという集中力をどれだけ保てるかが課題です。

昨年に続き2回目となる近藤(名古屋大1)は、受験で去年ほどの爆発的なスピードはないものの、一方で、技術の精度は着実にあがっています。得意のスプリントだけでなく、ミドルでも期待したいと思っています。

初の浪人生JWOCerの尾崎(トータス)は、そのOLへの真摯な姿勢と技術のキレに、鹿島田や加藤君も注目するほどの逸材です。今年は、これまで足りなかったタフさも加わりつつあり、メンタルを克服できれば、いまAファイナリストに一番近い選手かもしれません。

同じく昨年に続いて出場する元祖技巧派・深田(東海高2)は、この1年間をかけて弱点だったフィジカルをあげることに専念、徐々にその成果を出しつつあります。来年以降につながるレースを期待したいです。

初出場で深田のライバル宮西(東海高2)は、合宿でも目の覚めるような走りと信じられないようなミスが混じる、良くも悪くも「若さ」が特徴の選手です。その輝きを本番で見せてくれることを楽しみにしていま。

またセレクションの結果で、補欠に甘んじた堀田(東大2)も同行します。彼は本来今年のチームのエースになるべき選手です。サポート兼リーダー役としてもチームをまとめてくれることを期待しています。もちろん、誰かが怪我をした時は、彼が代表として走ることになります。

女子の最年長、星野(津田塾3)は、得意のスプリントでの活躍だけでなくインカレミドルでも準優勝と、この1年で驚くべき成長を見せています。道も多いデンマークではその持ち前のスピードを活かす良いチャンスだと思っています。

初出場の芦澤(相模女2)は丁寧な技術が信条の選手ですが、まだ発展途上です。難しいコースにもようやく慣れてきて、着実に実力はあがってきているので、デンマークでもうひとつ進化を期待したいと思っています。

同じく初出場の小柳(実践女2)も、はじめてまだ1年、走りも技術も正直まだまだです。ただ大事なレースでは驚くような走りを見せてくれるメンタルの強さがあります。本番でもその集中力を発揮して結果につなげて欲しいと思います。

最後に16歳の女子高生、宮川(ES関東C)は、男子にも負けない抜群の地図読み感覚とプラン能力を持っています。このセンスを活かしきり、ミドルでは来年につながる結果を期待したいと思います。

――今年のチームはバランスがいい感じがしますね。

国沢:それが特長です。昨年から続く選手が6人、新たな選手が5人。また高校生&浪人生が4人、大学生が7人。経験とフレッシュさがお互い良い関係を生み出していると思います。
それに走力派もいれば、技術派もいる。スプリント、ミドルを得意とする選手が多いんですが、一方でロングを目指す選手もいる。この多様性が、今年の強みであり、それぞれが各自のストロングポイントを理解し、レースで活かしきれれば、結果につながると考えています。

――選手の個性も豊かでまとめるのも大変でしょうが、チーム作りについて気をつけていることなどはありますか?

国沢:とにかく雰囲気をキープすることに努めています。ジュニア選手にとって、チームの雰囲気は大きくそのモチベーションにも関わってくるため、シニアに比べ重要であると思います。特に、経験者と初出場の選手との間で差が生じやすいので、なるべく一体となれるよう気を配っているところです。

――ポイントは一体感ですね。なるほど。

国沢:サッカー日本代表もそれで勝ち上がっていますからね(笑)。
一方で、これはこれから現地に行ってからの話なんですが、今度は逆に「楽しい」雰囲気をせき止めていくことも必要です。
ジュニアにとって、生まれて初めての海外ですし、浮かれたり、興奮してしまいがちです。でもそんな毎日では、とても普段通りの戦いはできません。もちろん仕方ない部分もあるんですが。
そんな中で、どう本番に向けて「やるぞ」という気分にチームを持っていくか、いつものレースをさせるのかが重要になります。今回は経験者も多いので、彼らを中心に良い準備をしていきたいと思っています。

――最後に、応援してくださっている方々へ、一言お願いします。

国沢:新生JAPANジュニアチームの挑戦は、まだ始まったばかりです。今回は半分が次回以降も挑戦できる若いチームで、中にはあと5回出られるという選手もいます。今回の結果に一喜一憂することなく、まずは暖かい目で見守っていただき、応援していただければと思います。
そして、ぜひ長い目で注目し続けてください。それが、ジュニアにとどまらず、これからの日本チームの未来につながっていくことになるはずです。

――どうもありがとうございました!

i-0fb6d049e20e69e4cd4a26b64f769691-kunisawa.jpg

<国沢五月(くにさわ いつき)プロフィール>

 1969年生まれ。東京都出身。1992&94 WorldCup日本代表、1993年WOC日本代表。2009年JWOCチームに同行。NPOトータス所属。2010年3月から現職。

 果たして、今年のJWOC選手たちは国沢氏や石澤氏の思いを受け、どのように戦ってくれるのだろうか。デンマークで行われる7月5日からの本戦に注目したい。

 また、JWOCチームでは、現地からの情報をブログで随時報告し、応援のコメントなども受け付けていくという。こちらも注目したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です