特別インタビューその1:ジュニアヘッドコーチ国沢氏に聞く(前編)

 7月5日からデンマークで開催されるJWOC2010に向け、日本代表チームは余念なく準備を進めている。今年は10年来JWOCチームの面倒を見てきた尾上秀雄氏に代わり、国沢五月氏がヘッドコーチに就任したのがこれまでと大きく違う点だ。コーチ側の視点からうかがった興味深い話を、これから2回に分けて紹介する。

――国沢さん、よろしくお願いいたします。

国沢:よろしくお願いします。

――さて、まずは、今年3月に国沢さんはジュニアヘッドコーチ就任されたわけですが、その経緯から伺いたいと思います。

国沢:かれこれ20年以上にわたり、スコードやトータスのジュニア合宿等で、高校生を中心にジュニアを見てきました。そんな中から、近年、尾崎や深田など高校生のうちから世界を目指す意識を持った逸材が育ち始め、実際JWOCセレクションでも高校生が何人も通るほどレベルがあがってきています。そこで、昨年彼らとともに、はじめてJWOCにコーチとして同行することにしたんです。

――国沢さんは高校時代もバリバリのオリエンティアだったそうで、そうした経歴を持つからこそ、世代を超えた今の高校生オリエンティアたちへの理解も深いのでしょうね。

国沢:そうですね、自分は高校生の頃からエリートで競ってきましたが、それでも当時JWOCはまだなく、ジュニアの頃から世界に出るなんて想像もできませんでした。

――昨年の遠征に行った際の印象はどうでしたか?

国沢:実際に行ってみて、現地で感じたのは、世界とのあまりに大きな差です。自分がWOCの代表選手として参加した20年前よりも、世界との差、特に中堅やお友達と思っていた下位の国とも、大きく差が開いていたことに衝撃を受けました。そしてそれに追いつくための方法論や体制が日本に全くできていないのです。今後、世界へ挑む彼らのためにも、これまでの体制を抜本的に変えなければと考えたのです。

――なるほど。

国沢:そしてもう一つは、昨年、中学高校時代からの親友で選手時代のライバルでもあった鹿島田君が強化委員長に就任し、「10年後WOCの表彰台に」というビジョンを掲げたことにも刺激を受けました。こうしたことが、自分がジュニアコーチを引き受けた理由です。

――鹿島田さんの場合もそうですが、国沢さんも自身が現在強化対象としているその年代だったときに世代を引っ張るトップランナーでした。そうした経歴を持つ方々が強化委員会の要職に就いた現在の体制は頼もしく思われます。

国沢:ランナーの実績と指導者の能力とは別ですから、うまくいくかどうかはわかりません。でも僕らももう40代。これまでお世話になってきたこのOLの世界を少しでもよくしたい、という気持ちはありますね。

――さて、ジュニアのほう、JWOC日本代表チームの長期的な目標についてですが
・・・

国沢:自分が就任の際、掲げた目標はまず「同じ舞台に上がること」です。去年見たジュニアチームは、いわば「記念参加」のよう。レースでもそれ以外でも、他の国の選手たちと同じだけの意識を持っているようには感じませんでしたし、実際、結果は二の次という印象でした。

――厳しい指摘です。

国沢:そんな状況だったので、まずは海外選手と同じ舞台にあがり、競い合う意識と自信を持つことからはじめなければならないと考えています。そのため、具体的な長期の目標を語る段階にないのですが・・・それも夢がないですよね(笑)

――ぜひお聞かせください。

国沢:自分の任期は3年間、今回を入れてあと4回。これは今回参加している深田や宮川が20歳になる頃までを区切りとして考えています。
あくまで、イメージですが、それまでにAファイナルに通過する選手を、一人ではなく複数出したい、というのがいま考えうる最終的な長期目標です。もちろん、これからの強化次第で、変わっていくかもしれませんが・・・

――なるほど。ジュニアとはいえ、JWOCもトップの選手にはそのままWOCで上位に通用する人もいます。そんな中でのAファイナル進出といえば、達成しがいのある目標ですね。客観的に見ても適切な目標設定のように感じられます。

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JWOC2010日本代表選手団

国沢:ありがとうございます。

――では、今年のメンバー選考について。以前はセレクションレース1本で何位まで通過、あとは今までの実績も含めて推薦、といった印象がありましたが、今年はどのような選考方法だったのでしょうか?

国沢:まず昨秋の1次選考でスプリント選考として女子を1名、またJWOC経験者選考として男女1名ずつを選出しています。

――スプリント選考が星野選手、経験者選考が近藤選手と宮川選手ですね。

国沢:そうですね。そして4月の選考会で男子5名+補欠1名、女子2名を選びました。このうち、選考レースの結果だけで選んだのは、男女トップの尾崎選手と芦澤選手です。
それ以外の選考における考え方は、選考レースと参考レースの成績に加え、将来性・成長性、足の速さ、意識の高さの3点を加味して選考しました。

――例年と大きく違うのは、女子を4名しか取らなかったことですね。女子が4名のみとは、思い切った決断のように感じられましたが。

国沢:一番の理由は、選考レースの結果です。去年JWOCに出場した宮川・星野は30分台のレースでしたが、3人目と4人目は40分台、5位以下は50分台と、力の差が大きく開いてしまいました。
実は、JWOCでは男女各6名のフルチームでエントリーする国自体が多くありません。今回もフルチームなのは37チーム中、北欧など13チームに過ぎないのです。
我々の強化する側のリソースも限られている中、今回は無理してフルメンバーを選ばずに少数精鋭を強化して臨もうと考えました。

――なるほど。早速、国沢さん流の考え方が形になって現れた印象です。

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<国沢五月(くにさわ いつき)プロフィール>

 1969年生まれ。東京都出身。1992&94 WorldCup日本代表、1993年WOC日本代表。2009年JWOCチームに同行。NPOトータス所属。2010年3月から現職。

 次回、後編では今年の準備状況やチームメンバーについて、そして国沢氏から
読者に向けてのメッセージなどについて触れる。

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